豊中の緑の診療所だより

豊中の緑の診療所「加地内科クリニック」からのおたよりです

東洋医学の体質診断のすすめ~体質に合わせた養生術

 

 

東洋医学 体質診断と養生術 加地内科クリニック


同じような生活をしていても、身体の調子はひとりひとり違います。ひとりひとりのバランス状態を「体質」といいます。「体質」によって気候などの環境の変化によっての身体の反応が変わります。また、「体質」によって、病気のなりやすさや、病気になった時の症状が変わります。中医学では、問診や触診、舌診によって「体質」を分類することができます。

ここでは、仙頭正四郎先生の「読体術」に従って、「体質」を脾虚、腎陽虚、血虚陰虚気滞、湿熱、血瘀、湿痰に分類します。「体質」によって養生の仕方も変わりますし、漢方などの治療も変わります。当院では、仙頭正四郎先生の「読体術」の判別チャートに従い、おひとりずつの「体質」診断ができるようにいたしました。みなさまの体質改善のお役に立てれば幸いです。

 

<体質診断と養生術>

 

脾虚

胃腸が弱いため、食べ物から「気」を十分に補充できないタイプです。
色白で、痩せ型、疲れやすそうな体格です。
胃腸が弱く、食欲がありません。慢性胃炎や下痢が多いですが、腸に元気がないための便秘にもなります。胃下垂や内臓下垂になりやすく、立ちくらみや低血圧になりやすいです。倦怠感や全身のだるさがあり、ちょっとしたことであざや内出血をおこしやすいです。免疫力が弱いため、かぜをひきやすくなります。

養生術としては、食べ過ぎないこと、冷たいものや生ものはなるべく避けること、身体をよく使って鍛え、よく寝ることも大切です。

おすすめ食材は、さつまいも、枝豆、グリーンピース、ひらめなどです。

②腎陽虚:

生命力が少ないタイプです。
「冷え」の症状が強く、冬の寒さや冷房が苦手です。
色白で華奢で体力がなさそうな体格です。
骨や歯がもろく、難聴、耳鳴り、めまいが多い。女性は無月経や生理不順、男性はインポテンツになりやすい。トイレが近く、夜中に何回も目が覚めます。腰痛症や冷え性、浮腫になりやすく、不眠症や頭痛、動悸、健忘症、認知症になることもあります。

養生術としては、身体が冷えないように注意し、冷たいものや生ものはなるべく避けること、身体をよく動かし、楽しく過ごすことです。

おすすめ食材は、羊肉、えび、くるみ、栗などです。

血虚

全身に栄養を与える「血」が不足したり、その働きが低下しているタイプです。
顔色が白っぽく、かさついてつやがありません。髪にもつやがなく、細くて抜けやすくなります。皮膚や筋肉が薄い体つきです。目の疲れ、かすみ、筋肉の疲れやひきつり、手足の冷えやしびれなどの症状があります。
病気としては、貧血症、月経異常、神経障害、筋肉痛、不整脈、めまい、不眠症、健忘症、認知症などもみられます。

養生術は、「血」を増やす食材として、人参、ほうれん草、ひじき、レバー、栗、クルミなどを増やすようにします。また、昼間よく身体を動かし、夜間睡眠を十分に取るようにします。

おすすめ食材は、かつお、牛肉、黒ごま、卵などです。

陰虚

身体を潤す「津液」が不足しているタイプです。
皮膚や髪は乾燥し、「熱」が浮き上がります。熱っぽさが夕方や夜によくみられ、手足のほてりがあり、寝汗をかくこともあります。動悸、不眠、煩繰感、めまい、耳鳴などの症状がよく見られます。病気としては、不眠症、健忘症、神経症、めまい、耳鳴、白内障、ドライアイ、口内炎、慢性気管支炎、アトピー性皮膚炎などがおこりやすくなります。

養生術としては、過労を避け、睡眠をしっかりとることで、津液の消耗を避けて、補うことが必要です。また、強壮剤や香辛料はとりすぎないようにしましょう。

おすすめ食材は、きくらげ、人参、小松菜、ヨーグルトなどです。

 ⑤気滞

「気」が滞って過剰なタイプです。
几帳面で神経質、イライラしたり、ふさぎこみやすくなります。
渋滞した「気」が時々発散するのでげっぷやおならが多く、よくため息をつきます。
「気」が渋滞すると「熱」がこもり、口の渇き、苦み、顔のほてり、頭痛、耳鳴り、全身のかゆみなどのこります。「熱」が臓器に移ると胃痛、吐き気、胸焼け、動悸、不眠、多夢、咳などの症状があらわれます。
なりやすい病気としては、神経症躁鬱病自律神経失調症、月経痛、神経痛、不眠症不整脈、胃十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群気管支喘息アトピー性皮膚炎などです。

養生術としては、極力怒らないこと、イライラしないこと、いろいろなことに興味を向けて、ひとつのことにくよくよしないことです。

おすすめ食材は、ジャスミン茶、きんかん、ピーマン、グレープフルーツなどです。

⑥湿熱:

過剰な「水」と「熱」が体の中で結びつき、充満して、「気」や「血」の動きを邪魔するタイプです。
食欲旺盛で、がっちりした体格の肥満タイプの人が多いです。
身体の中に「湿熱」がたまると鼻汁、痰、耳だれ、おりものなど、黄色いドロドロした分泌物が増えます。傷も化膿しやすく、なおりにくくなります。
なりやすい病気としては、蓄膿症、中耳炎、脂漏性湿疹、慢性気管支炎など、化膿性炎症がおこりやすくなります。また、高血圧、脂質異常症、糖尿病、がん、前立腺肥大症などのリスクも高くなります。

養生術としては、食べ過ぎ、飲み過ぎに注意し、香辛料や味の濃いものは避けるようにしてください。体を動かすことで、体の中にたまった余分なものを消費するようにしましょう。

おすすめ食材は、はと麦、キャベツ、しじみ、冬瓜などです。

⑦血瘀:

身体を養う「血」の流れが渋滞しているタイプです。
皮膚の色が浅黒く、くすんだ感じで、つやがありません。
「血」の滞りのために、体のあちこちにかたまりができたりしやすく、刺すような固定性の痛みが続きやすくなります。
なりやすい病気としては、生理不順、生理痛、脳血管障害、心血管障害、便秘、痔核、子宮筋腫卵巣嚢腫、肝硬変、癌などです。

養生術としては、「気」の流れを良くすることで「血」の流れも改善することです。イライラ、くよくよをなくし、体を動かして明るく過ごすようにしましょう。また、冷たい飲食物を避けて、体を冷やさないようにしましょう。

おすすめ食材は、黒豆、クランベリー、パセリ、さばなどです。

⑧湿痰:

体内に「水」があふれているせいで「気」や「血」の動きが悪く、「熱」が奪われて体が冷えるタイプです。
色白の肥満タイプで、皮膚はむくみ気味です。少し動くと汗が出て、息切れや動悸が目立ちます。
「湿」が「気」や「血」の動きを邪魔するので、倦怠感、頭痛、静脈瘤などの症状が出やすくなります。手足の冷えやむくみ、湿疹、かゆみがみられます。
なりやすい病気としては、アレルギー性鼻炎アトピー性皮膚炎、じんましん、慢性気管支炎、高血圧症、めまい、心不全、気管支炎、関節炎などがあります。

養生術としては、水分の取り過ぎを減らし、冷たい飲食物も避けるようにしましょう。体を動かしてしっかり汗をかきましょう。

おすすめ食材は、大根、えのきだけ、りんご、わかめなどです。

 

参考:「自分でできる読体術」仙頭正四郎著、小学館

   「漢方治療指針」幸井俊高著、日経BP